コラム
VOL3 歯の神経
Date: 2000-11-10

今回は歯の神経についてお話します。

歯は、外側を覆っているエナメル質、その下の大部分を占める象牙質、骨と歯の間に存在する膜(歯根膜)と歯の根をつなげる役目をするセメント質、そして中心に空洞がありそこに歯髄(神経)があります。虫歯で痛みが出るのは、この神経の存在があるからで、この神経は刺激に対して痛みしか感じません。普通の神経であれば、かゆい、熱い、冷たい、押されている、つねられている…と色々複雑に感覚が伝わるものですが、歯の神経は、何をされても痛い!と感じるだけでそれ以外の感覚はありません。「歯がかゆい!」という人はいませんよねえ。

要は健康な状態(外来から刺激が加わらない状態)以外では痛み(しみる)が出ますので、その感覚が出たら要注意。早めの受診をお勧めします。ただし歯の神経が残っていて、金属の詰め物が入っていると熱の伝導性が良くなるので、痛み(しみる)は感じやすくなります。特に冷たいもの(冷えたビールやアイスクリーム等)や温かいもの(ラーメンやお味噌汁等)を食べると一時的にキーンとしみます。でも慣れるとしみなくなります。

これは問題の無い状態。皆さんは治療をして金属の詰め物入れたらしみるようになった経験はありませんか?一時的なものであれば全く問題ありません。そのしみる感じがずーっとずきずき感じるようでしたら要注意。早めの受診をお勧めします。  では「なんでそのしみるのを我慢させてまで神経を歯医者が残そうとするの??」「虫歯で治療する歯は全部神経とってしまえば楽じゃないのさ!!」と思われる方が大半だと思いますが、神経と一緒に毛細血管も通っていて、前述の象牙質に栄養や水分を供給しています。

神経だけ取れるのなら良いのですが、そんな訳にはいかず、一緒に血管もとれてしまいます。そうすると歯に栄養を供給できなくなり、ミイラと一緒の状態になって干からびてしまうのです。乾燥しているので割れやすいですし、虫歯菌への抵抗力も落ちます。神経の生きている歯は虫歯が進行すると痛みが出てきますが、神経を取ってしまった歯は痛みを全く感じないので虫歯の進行に気づくのが遅れ、最悪の状態(抜歯)になる可能性が大変高いのです。それと根の治療は見えない部分を探っている訳で、完璧な治療をするのは大変難しいものでもあります  言い訳に聞こえますが、いくらやっても上手く行かない場合がたくさん出てきます。

そうなると根の先に病気ができてしまいます。それを放っておくと膿が溜まって痛みが出たり袋状の腫瘍(のう胞といいます)になって手術しなければ取り除けなくなったりします。一本でも神経を抜いた歯がある人は定期的にレントゲンを撮って中の状態を調べておかないと大変な事になっている可能性があります。そうならない様に、定期検診は欠かせないのです。

床屋さんや美容室に行くように、定期的に歯医者に通う癖をつけましょう!!  次回は実際の根の治療方法についてできる範囲で説明します。

VOL2 セメントと接着剤
Date: 2000-10-18

皆さん接着剤とセメントの違いって知っています?

そんなこと知る人は業界人以外いないですよね。簡単に言うとセメントはつける物同士の表面の微細な凸凹に入り込んで機械的に引っかかってその力で支えます。接着剤は、つける物同士の表面の性状を変化させお互いを一体化させてしまいます。

昔はこの表面性状を変化させるのが大変なことでしたが、現在は進歩して色々なものをかなり強力に接着させることが出来るようになってきています。スペースシャトルの表面の耐熱タイルは接着剤でくっついていて大気圏突入時の高温と衝撃、圧力に耐えています。 現代の接着技術はねじ止めやセメントよりもより強力に、物をくつけるといっても過言ではないでしょう。でもとってもコストがかかるのが難点です。

さて本題に入りますが、詰め物や冠をつける時、Drが助手の人に「はい練って」と掛け声をかけて助手の人が粉と液を華麗に混ぜているのを見たことのある人は多いと思います。そう。歯科でもセメントを使って冠や詰め物をくっつけています。でもセメントでは機械的に引っかかっているだけなので、すごく小さな隙間があります。そこに虫歯菌や様々な汚れが浸透するとどうなるでしょうか?冠が外れたり、壊れたりします。それだけならよいのですが、虫歯菌が入り込んでいる時は冠や詰め物の中で虫歯が進行します。ちょっと恐い話ですよね。  

ミルキーやキャラメルなどを食べて冠や詰め物が取れた経験のある人は少なくないと思います。接着剤があれば隙間なく一体化できるわけですから虫歯にもなりづらいですし、外れづらくなります。じゃあ接着剤はないの??もちろんあります。ちゃんとした歯科用の接着剤が。但しつけるのに大変手間がかかります。もちろんコストもかかります。そんなわけで歯科ではまだセメント主流の時代です。  

但し私のクリニックではセメントは使っていません。詰め物や冠をつける時はすべて接着剤を使用しています。コストはかかりますが患者さんを思うとそうせざるを得ません。そんなわけで、セメントで以前詰めた詰め物や冠を接着剤でつける新しいものにやり直すのはどうでしょうか?

恐い歯の詰め物
Date: 2000-09-29

さんアマルガムと言う歯の詰め物を知っていますか?

アマルガムとは水銀を含む合金の総称で歯科では銀を主成分とする銀アマルガムが歯の部分的な 詰め物に使われてきました。詰めた後、固まる際に膨張するので、隙間ができづらく虫歯になりにくいと言うことで、以前(10~20年ぐらい前まで)は頻繁 に使われていました。でも最近ではほとんど使われなくなってきているのが現状です。ではどうして使われなくなってきているのでしょうか?

その理由は、まず 水銀と聞いて良いイメージを持つ人は皆無だと思います。いくら合金だからと言って水銀が入っているのは気持ちの良いものではありませんよね。

もう一つは、銀です。皆さん銀食器ってすぐ黒い酸化膜が出来ますよね。口の中で唾液に触れる部分はよりいっそう酸化の進む環境です。酸化というのは化学反 応ですので、必ずイオン化が起こり、口の中に微量ながら金属が溶け出します。その溶け出した金属が体の中に溜まり末端に蓄積されて原因不明の皮膚炎や湿疹 の出る人もいます。口の中のアマルガムをやりなおしたら皮膚炎や湿疹が治ったという人も報告されています。

詰め物が極端に黒くなってい る人は要注意それは多分アマルガムです。金属アレルギーと言う言葉を耳にしたことがある人も多いと思いますが、アクセサリーだけでなく歯の詰め物でもアレ ルギー反応は出ます。20年位前に歯の治療をしている人は、そのような恐い詰め物が入っている可能性が高いので詰め物をやり直すことをお勧めします。指の 先に金属が溜まってきているなんて思ったら
ぞっとしませんか???

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